「親のもの忘れが増えてきたけど、病院に連れて行くべき?」 「認知症の検査って、どんなことをするの?」 「本人が嫌がったら、どうやって受診させればいい?」
認知症の検査と聞くと、本人も家族も不安になります。
調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、「検査がどんなものかわからないから怖かった」と話すご家族を多く見てきました。
流れを知っておくだけで、受診へのハードルはかなり下がります。
この記事では、認知症の検査の流れ、長谷川式認知症スケール、MRIや血液検査、MCIとは何か、家族ができる準備をお伝えします。
認知症の検査が必要な理由|早く気づくほど準備しやすい
「まだ大丈夫、体調のせいだ」
「年齢のせいかもしれない」
そう思って受診を先延ばしにしたくなる気持ちは自然です。
ただ、認知症は早く気づくほど、できることが増えます。
早期発見には、次のようなメリットがあります。
・進行を遅らせる薬を早い段階で検討できる
・本人が今後の生活について意思決定しやすい
・家族が介護や住まいの準備を始めやすい
・認知症に似た別の病気を見つけられることがある
特に大切なのは、もの忘れの原因が必ずしも認知症とは限らないことです。
甲状腺の病気、ビタミン不足、うつ病、脱水、薬の影響などでも、もの忘れやぼんやり感が出ることがあります。
検査は「認知症と決めつけるため」ではなく、原因をきちんと確認するために行います。
認知症の検査の流れ|問診・認知機能検査・画像検査・血液検査
認知症の診断は、ひとつの検査だけで決まるわけではありません。
問診、認知機能検査、画像検査、血液検査などを組み合わせて、総合的に判断されます。
① 問診・身体診察
まず医師が、本人や家族から話を聞きます。
本人は困りごとを忘れていたり、「大丈夫」と答えたりすることがあります。
ここで大切なのが、家族からの情報です。
受診前に、気になった出来事をメモしておくと診察がスムーズです。
② 認知機能検査
認知機能検査では、記憶力、計算、言葉の理解、日付や場所の認識などを確認します。
代表的なものに、長谷川式認知症スケール(HDS-R)があります。
痛みを伴う検査ではなく、医師やスタッフとのやりとりで進みます。
時間は10〜20分程度で終わることが多いです。
「試験のように点数をつけられる」と感じて緊張する方もいますが、目的は本人を責めることではありません。
今の状態を知り、今後の治療や支援につなげるための検査です。
③ 画像(MRI・CT)検査
MRIやCTでは、脳の状態を確認します。
| 検査 | 特徴 |
|---|---|
| MRI | 脳の萎縮や小さな病変を詳しく確認しやすい |
| CT | 短時間で撮影しやすく、大きな病変の確認に使われる |
画像検査では、脳の萎縮、脳梗塞の跡、出血、腫瘍などがないかを確認します。
閉所が苦手な方、じっとしているのが不安な方は、事前に医療機関へ伝えておくと安心です。
④ 血液検査
血液検査では、認知症に似た症状を起こす別の原因がないかを確認します。
たとえば、甲状腺機能低下症、ビタミン不足、貧血、肝臓や腎臓の機能低下、感染や炎症などです。
「認知症だと思っていたら、別の病気や薬の影響だった」ということもあります。
血液検査は、見落としを減らすために大切な検査です。
長谷川式認知症スケールとは?内容と見方
長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、日本でよく使われる認知機能検査のひとつです。
30点満点で、一般的には20点以下の場合に認知症の疑いがあるとされます。
ただし、点数だけで認知症と決まるわけではありません。
緊張、体調、聞こえにくさ、その日の疲れなどでも点数は変わることがあります。
① 長谷川式で聞かれる内容
見当識(時間や場所を正しく理解する力)、記憶、計算、言葉の出やすさなどを見ています。
難しい医療機器を使う検査ではなく、会話に近いやりとりで進みます。
② 点数だけで落ち込まなくていい
長谷川式は、あくまでスクリーニング(ふるい分け)の検査です。
点数が低いからすぐ認知症と決まるわけではなく、問診、画像検査、血液検査、生活の様子も合わせて判断します。
また、本人が「試されている」と感じると、緊張して本来の力を出しにくいこともあります。
家族は、検査前に、
「難しい問題もあるみたいだけど、できるところまでで大丈夫だよ」
と声をかけてあげるとよいです。
MCIとは?認知症との違い
検査の結果、「MCI」と言われることがあります。
「MCI」とは、「軽度認知障害」のことです。
簡単にいうと、認知症ではないけれど、年齢相応とも言い切れない中間の状態です。
| 状態 | 生活への影響 |
|---|---|
| 年齢相応のもの忘れ | 生活への支障は少ない |
| MCI | もの忘れはあるが、日常生活はおおむね保てている |
| 認知症 | 生活や社会活動に支障が出ている |
MCIと診断されたからといって、必ず認知症になるわけではありません。
生活習慣の見直し、運動、睡眠、社会参加、持病の管理で、進行をゆるやかにできる場合があります。
MCIと言われたときに大切なのは、「まだ認知症ではないから放置する」ことではありません。
定期的に受診し、変化を見ながら早めに対策することです。
家族が付き添うときのポイント
認知症の検査では、家族のサポートがとても大切です。
本人がうまく説明できないことを補えるだけでなく、安心して受診する助けにもなります。
① 気になった出来事をメモしておく
受診前に、次のようなことをメモしておくと役立ちます。
・いつ頃から気になったか
・同じ話を何回くらいするか
・忘れて困った具体的な出来事
・薬やお金の管理で困っていること
・火の消し忘れや道に迷ったこと
・性格や行動の変化
本人の前で話しにくい内容は、メモにして医師へ渡しても大丈夫です。
② 受診の誘い方を工夫する
「認知症の検査に行こう」と正面から言うと、本人が傷ついたり、怒ったりすることがあります。
75歳の父親が最近もの忘れが多くなっていると心配していた娘さんから、「病院に連れて行こうとしたら怒り出してしまって」と相談を受けたことがあります。「認知症」という言葉そのものへの抵抗感が強い方は多いです。そこで「最近疲れが気になるから、健康チェックに一緒に行こう」「血圧を測ってもらいに行くついでに」という形で誘ってみることをご提案しました。「それなら行く」とあっさり承諾してくれたと、後日娘さんから連絡をいただきました。受診の目的を「認知症の検査」として正面から伝えるより、「体全体を診てもらう機会」として誘うほうが、スムーズにいくことが多いです。
本人のプライドを守りながら、受診につなげることが大切です。
③ 当日は穏やかに見守る
検査中に本人が答えられないと、家族はつい助けたくなることがあります。
でも、横から答えを教えたり、「それ違うでしょ」と言ったりすると、本人が混乱したり傷ついたりします。
検査中は、穏やかに見守ることが一番のサポートです。
医師に伝えたいことがある場合は、診察前後にメモで渡すとスムーズです。
受診・相談したほうがよいサイン
次のような変化が続く場合は、早めに相談してください。
| サイン | 見ておきたいポイント |
|---|---|
| 同じことを何度も聞く | 最近の出来事を忘れていないか |
| 予定や約束を忘れる | 生活に支障が出ていないか |
| 日付や場所がわかりにくい | 見当識の低下がないか |
| 料理や金銭管理が難しい | 以前できていたことができているか |
| 性格や言動が変わった | 怒りっぽい、無気力などがないか |
| 薬の管理ができない | 飲み忘れ、飲み過ぎがないか |
「まだ大丈夫かな」と迷う段階で相談しても問題ありません。
受診先としては、まずかかりつけ医で大丈夫です。
必要に応じて、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科などへ紹介されます。
まとめ|認知症の検査は流れを知ると受けやすくなる
認知症の検査について整理すると、
・認知症の診断は、問診、認知機能検査、画像検査、血液検査を組み合わせて行う
・長谷川式はスクリーニング検査で、点数だけで診断が決まるわけではない
・MRIやCTでは、脳の萎縮や脳梗塞、別の病気がないかを確認する
・血液検査では、認知症に似た症状を起こす病気がないかを調べる
・MCIは認知症ではないが、経過観察と生活習慣の見直しが大切
・家族は気になった出来事をメモし、本人を責めずに付き添うことが大切
「検査で何をされるかわからない」という不安が、受診を遅らせることがあります。
でも、認知症の検査は、本人を責めるためのものではありません。
今の状態を知り、これからの生活を守るための第一歩です。
症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。
※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。
診断・検査・治療については、必ず医療機関にご相談ください。
