「食後にどうしても眠くなる」

「夕方になると甘いものが無性に食べたくなる」

「昼食後の会議で毎回ぼーっとしてしまう」

そんな経験はありませんか?

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、「健診では血糖値に大きな異常はないのに、食後の不調が続く」という相談を受けることがあります。

その原因のひとつとして見落とされやすいのが、血糖値スパイクです。

血糖値スパイクは、糖尿病の方だけでなく、健診で大きな異常がない方にも起こることがあります。

この記事では、血糖値スパイクの仕組み、症状、原因、今日からできる対策をお伝えします。

血糖値スパイクとは?

血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後急降下するような血糖変動のことです。

食事をすると、炭水化物などが消化・吸収され、ブドウ糖として血液中に入ります。

そのため、食後に血糖値が上がること自体は自然な反応です。

ただし、血糖値が急激に上がり、その後大きく下がると、体に負担がかかりやすくなります。

① 正常な血糖変動と血糖値スパイクの違い

血糖値の変化を簡単に整理すると、通常の血糖変動は食後にゆるやかに上がり、時間をかけて戻るのに対し、血糖値スパイクは食後に急上昇し、その後急降下するといった形をとります。

イメージとしては、ジェットコースターのように血糖値が大きく上下する状態です。

この急激な変動が、食後の眠気、だるさ、集中力低下、食事をしたはずなのに甘いものがほしくなるなどにつながることがあります。

② 健診では見えにくいことがある

血糖値スパイクがやっかいなのは、通常の健診だけでは見えにくいことです。

健診では、空腹時血糖やHbA1cを確認することが多いです。

空腹時血糖は空腹時の血糖値、HbA1cは過去1〜2か月の平均的な血糖状態を示す指標です。

一方で、血糖値スパイクは「食後の急な変動」です。

そのため、空腹時血糖やHbA1cが大きく悪くなくても、食後に血糖値が大きく動いている場合があります。

血糖値は「健診で大丈夫だったから絶対に問題ない」とは言い切れない点に注意してください。

血糖値スパイクで起こりやすいサイン

血糖値スパイクは、自覚症状だけで判断できるものではありません。

ただ、食後の不調として、いくつか特徴的なサインが出ることがあります。

① 食後30〜60分に出やすいサイン

食後に血糖値が急に上がると、次のような症状が出ることがあります。

・強い眠気
・頭がぼーっとする
・集中力が続かない
・体がだるい
・やる気が出ない

昼食後の会議で眠くなる、午後の仕事に集中できないという方は、食後の血糖変動が関係しているかもしれません。

もちろん、睡眠不足や食べすぎ、疲れなども関係します。

ただ、毎回のように食後に強い眠気が出る場合は、食事内容や食べ方を見直してみる価値があります。

② 食後2〜3時間後に出やすいサイン

血糖値が急に上がったあと、大きく下がると、次のような症状が出ることがあります。

・急に甘いものが食べたくなる
・強い空腹感が出る
・イライラする
・手が震える感じがある
・疲れやすい

「昼食を食べたのに、夕方になると甘いものが我慢できない」という方は、血糖値の急降下が関係していることがあります。

甘いものを食べる

血糖値が急に上がる

その後、急に下がる

また甘いものが欲しくなる

このようなループに入りやすくなることがあります。

血糖値スパイクが起きやすい原因

血糖値スパイクは、食べる量だけでなく、食べ方や組み合わせでも起こりやすくなります。

特に、次のような習慣がある方は注意してください。

① 糖質の多い食事を一気に食べる

白米、パン、麺類、甘い飲み物などは、血糖値を上げやすい食品です。

これらを空腹の状態で一気に食べると、食後血糖値が急に上がりやすくなります。

特に注意したい食べ方は次の通りです。

・丼ものだけで済ませる
・ラーメン、うどん、パスタなど単品で済ませる
・朝食を抜いて昼にまとめ食いする
・空腹で甘い飲み物を飲む
・お菓子を食事代わりにする

単品の食事は手軽ですが、たんぱく質や食物繊維が不足しやすく、血糖値が上がりやすい組み合わせになりがちです。

② 食物繊維が少ない

食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにする助けになります。

野菜、きのこ、海藻、豆類などが少ない食事では、糖の吸収が速くなり、血糖値が急に上がりやすくなります。

コンビニ食や外食が多い方は、主食と肉類はとれていても、食物繊維が不足していることがあります。

③ 糖質から先に食べている

同じ食事でも、食べる順番で血糖値の上がり方は変わります。

ご飯やパン、麺から先に食べると、糖質が先に吸収され、血糖値が上がりやすくなります。

一方で、野菜、きのこ、海藻、たんぱく質を先に食べると、糖の吸収がゆるやかになりやすいです。

食事内容を全部変えるのは難しいという方でも、食べる順番なら今日から始めやすいと思います。

④ 早食いしている

早食いも血糖値スパイクの原因になります。

よく噛まずに短時間で食べると、糖が一気に吸収されやすくなります。

また、満腹感を感じる前に食べすぎてしまうこともあります。

食事時間が10分以内の方は、まず15〜20分を目標にしてみてください。

血糖値スパイクを放置するとどうなる?

血糖値スパイクは、食後に少し眠いだけの問題ではありません。

繰り返されると、将来の健康リスクにつながることがあります。

① 糖尿病リスクにつながることがある

血糖値が急に上がるたびに、体は血糖値を下げるためにインスリンを分泌します。

この状態が何度も続くと、すい臓に負担がかかりやすくなります。

また、インスリンの効きが悪くなるインスリン抵抗性にもつながることがあります。

すぐに糖尿病になるという意味ではありません。

ただ、血糖値スパイクを起こしやすい生活が続くと、将来の健康に影響する可能性があります。

② 血管への負担が心配される

急激な血糖変動は、血管に負担をかけると考えられています。

血管の健康は、心臓や脳、腎臓の健康にも関わります。

そのため、血糖値スパイクを防ぐことは、糖尿病予防だけでなく、血管を守る意味でも大切です。

③ 慢性的なだるさや甘いもの欲求につながる

血糖値の上下が大きいと、食後の眠気、だるさ、集中力低下、甘いものへの欲求が続きやすくなります。

「午後になると眠くて毎日しんどい」

「甘いものがやめられない」

という方は、意思の問題だけではなく、血糖値の波が関係しているかもしれません。

今日からできる血糖値スパイク対策

血糖値スパイク対策は、特別な食事療法や厳しい制限から始める必要はありません。

まずは、今日の食事から変えられることをひとつ試してみてください。

① 野菜・たんぱく質から先に食べる

最も始めやすいのは、食べる順番を変えることです。

おすすめの順番は、

  1. 野菜、きのこ、海藻
  2. 肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質
  3. ご飯、パン、麺などの糖質

です。

食事内容を完璧に変えなくても、順番を変えるだけなら始めやすいと思います。

外食でも、丼ぶり、パスタだけではなくサラダ、小鉢、みそ汁、たんぱく質のおかずをそえて、それから先に食べてみてください。

② 食後10分歩く

食後に軽く体を動かすと、筋肉が血液中の糖を使いやすくなります。

おすすめは、食後15〜30分くらいに10分ほど体を動かすことです。

特に昼食後や夕食後は取り入れやすいタイミングです。

外に出る必要はなく、室内でもかまいません。

・その場足踏みを10分
・家の中を歩く
・階段をゆっくり使う
・かかと上げをする
・立って家事をする

「運動」と考えるとハードルが上がりますが、「食後に少し動く」と考えると続けやすいです。

③ 食物繊維を毎食プラスする

血糖値スパイク対策では、食物繊維を増やすことも大切です。

食物繊維は、糖の吸収をゆるやかにする助けになります。

毎食、次のどれかを足してみてください。

・もずく、めかぶ
・わかめ入りのみそ汁
・きのこ
・ブロッコリー
・豆腐、納豆
・オクラ、山芋
・海藻サラダ

野菜をたくさん用意するのが難しいときは、みそ汁に豆腐やわかめを足す、冷凍ブロッコリーを使う、納豆を追加するだけでも十分です。

難消化性デキストリンなどの食物繊維サプリを使う方法もありますが、まずは食事から増やすことを基本にしましょう。

薬を飲んでいる方やお腹が張りやすい方は、サプリを使う前に薬剤師へ相談してください。

血糖値スパイクが気になるときの確認方法

血糖値スパイクは、通常の健診では見えにくいことがあります。

気になる症状が続く場合は、自己判断で不安を抱え込まず、医療機関や薬剤師に相談してください。

① 血液検査で確認できること

まず基本になるのは、空腹時血糖とHbA1cです。

空腹時血糖やHbA1cが正常でも、食後の血糖値が高い場合があります。

食後の不調が続く場合は、「食後血糖が気になります」と医師に伝えてみてください。

② 持続血糖測定(CGM)で血糖変動を見る方法もある

最近では、持続血糖測定(CGM)という方法で、血糖値の変動を確認することがあります。

皮膚にセンサーをつけ、血糖値の変化を連続的に見る方法です。

食後にどの食事で血糖値が上がりやすいか、どのタイミングで下がるかを確認しやすいのが特徴です。

ただし、すべての方に必要な検査ではありません。

気になる方は、医師や薬剤師に相談してください。

受診・相談したほうがよいサイン

次のような場合は、早めに相談してください。

・食後の強い眠気やだるさが続く
・甘いものへの強い欲求が続く
・検診の結果で血糖値が指摘され、家族に糖尿病の方がいる
・のどの渇き、頻尿、体重減少がある
・糖尿病の薬を飲んでいて食後の不調がある

特に、糖尿病の薬を使っている方で、手の震え、冷や汗、強い空腹感、動悸、ふらつきがある場合は、低血糖の可能性もあります。

食後の眠気やだるさをすべて血糖値スパイクと決めつけず、気になる症状があるときは医療機関に相談してください。

まとめ|血糖値スパイクは食後の不調の原因になることがある

血糖値スパイクについて整理すると、

・血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、その後急降下する状態
・食後の強い眠気、だるさ、集中力低下、甘いもの欲求と関係することがある
・糖質の多い食事、早食い、食物繊維不足、糖質から先に食べる習慣で起こりやすい
・繰り返すと、血管への負担や将来の血糖管理に影響する可能性がある
・野菜やたんぱく質から食べる、食後10分歩く、食物繊維を足すことが対策になる
・健診で異常がなくても、食後の不調が続く場合は相談する

血糖値スパイクは、体型や年齢に関係なく起きている可能性があります。

食後に何となく体がだるい、眠気がある、頭が重いなどの症状がある時はまずは、今日の食事で「糖質を最後に食べる」「食後に10分歩く」「食物繊維をひとつ足す」のどれかを試してみてください。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

血糖値の管理、糖尿病治療薬の使用、低血糖時の対応については、必ず主治医または薬剤師にご相談ください。