「最近、親の様子がなんか変」 「もの忘れが増えてきたけど、認知症なのかな?」 「受診したほうがいいのか、まだ様子を見ていいのかわからない」

こうした不安を抱えながら、どこに相談すればいいかわからないまま時間が過ぎてしまう方は少なくありません。

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、認知症の初期症状は「気づいてから受診するまでに時間がかかりやすい」と感じてきました。

認知症は、早く気づくほど、治療や生活の準備がしやすくなります。

この記事では、認知症の初期に現れやすいサイン、本人・家族それぞれのチェックリスト、見落とされやすい症状、受診の目安をお伝えします。

認知症の初期症状が見落とされやすい理由

認知症の初期症状は、「年のせい」「疲れているだけ」と見過ごされやすいです。

最初から毎日大きなトラブルが起きるわけではなく、たまに「あれ?」と思う程度のことが多いからです。

在宅医療の現場でも、「あのときの変化に早く気づいておけば」と後から話されるご家族を何度も見てきました。

① 見落とされやすい理由

認知症の初期症状が見逃されやすい理由には、次のようなものがあります。

・症状が毎日ではなく、たまに起きる
・本人が不安やプライドから隠そうとする
・家族が「気のせいかな」と思ってしまう
・もの忘れと認知症の違いがわかりにくい
・うつ病や疲れ、更年期、睡眠不足と似て見えることがある

ここで大切なのは、「なんとなくいつもと違う」という感覚です。

医学的な判断は医師が行いますが、最初の気づきは家族の違和感から始まることが多いです。

本人向け|認知症の初期症状チェックリスト

まずは、本人が気づきやすい変化から確認してみましょう。

最近2〜3か月の間に、以前と比べて変化があるかを見てください。

① 記憶・時間に関すること

・□ 数分前に話したことや聞いたことを覚えていない
・□ 同じ話を短時間で繰り返してしまう
・□ 今日の日付、曜日、月がすぐにわからない
・□ 約束したことをすっかり忘れることが増えた
・□ 昨日や今日の出来事が思い出しにくい

② 行動・生活に関すること

・□ いつも置いていた場所に物を置き忘れることが増えた
・□ 料理の手順を途中で忘れてしまうことがある
・□ 電気、ガス、水道の消し忘れが増えた
・□ 財布、スマホ、鍵を頻繁に探すようになった
・□ お釣りの計算や金額の確認が難しくなってきた

③ 気分・性格に関すること

・□ 以前より怒りっぽくなった
・□ 気分が変わりやすくなった
・□ 好きだったことへの興味が薄れてきた
・□ 人と会うことや外出が面倒になってきた
・□ 不安感や落ち込みが以前より強くなった

3個以上当てはまる場合は、かかりつけ医やもの忘れ外来への相談を検討してください。

ただし、チェックリストは診断ではありません。

「いくつ当てはまったか」だけでなく、生活に支障が出ているか、以前と比べて変化しているかが大切です。

家族向け|周囲が気づきやすいサイン

認知症の初期では、本人より家族のほうが変化に気づきやすいことがあります。

本人は本当に忘れているため、自覚がないことも多いです。

① もの忘れ・繰り返し

・□ 10〜15分以内に同じ質問や同じ話を繰り返す
・□ 昨日食べたものや外出したことを覚えていない
・□ 昔のことは話せるが、最近のことを覚えていない
・□ ヒントを出しても思い出せないことが増えた

② 日常生活の変化

・□ 以前できていた料理や家電操作ができなくなった
・□ 服の組み合わせや季節感が合わなくなった
・□ お金の管理が難しくなった
・□ 以前は迷わなかった場所で道に迷うようになった
・□ 薬の飲み忘れ、飲み過ぎが増えた

③ 性格・行動の変化

・□ 以前より怒りっぽい、攻撃的になった
・□ 「財布を盗まれた」など被害的な発言が出た
・□ 趣味、外出、人との交流をやめてしまった
・□ 身だしなみに無頓着になった
・□ 夜中に起き出して活動するようになった

3個以上当てはまる場合や、生活に支障が出ている場合は、医療機関への相談をおすすめします。

ですが、次のような変化がある場合は、早めに相談してください。

④ 特に注意したいサイン

・□ 火の消し忘れが繰り返しある
・□ 同じものを何度も買ってくる
・□ 詐欺被害や過剰な買い物など、金銭トラブルが起きた
・□ 薬を飲んだかどうか確認できない
・□ 外出先から帰れなくなったことがある

見落とされやすい初期症状5つ

認知症の初期症状は、もの忘れだけではありません。

在宅医療の現場でも、「最初はこういう変化だった」と後からわかることがあります。

① においがわかりにくくなる

アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では、においを感じにくくなることがあります。

食事の味が変わった、ガス漏れに気づきにくい、焦げたにおいに反応しにくいといった変化がサインになることがあります。

② 料理の味つけや手順が変わる

長年作っていた料理が急にしょっぱくなった、薄くなった、同じものばかり作るようになった。

こうした変化は、認知機能の低下が関係していることがあります。

③ リモコンやスマホの操作が難しくなる

長年使っていたテレビのリモコン、スマホ、電子レンジなどの操作が急に難しくなることがあります。

これは、実行機能(手順を考えて行動する力)の低下と関係することがあります。

「毎回同じ操作を聞いてくる」「説明してもすぐわからなくなる」という変化が続く場合は注意してください。

④ 同じものを何度も買ってくる

冷蔵庫に同じ食材がいくつもある、日用品のストックが異常に増える。

これは、買ったことを忘れて、また買ってしまうことで起こります。

本人は悪気があるわけではありません。

買い物の内容が急に偏ってきたときは、生活の変化として見ておきたいサインです。

⑤ 約束の時間や場所を間違える

病院の予約を忘れる、待ち合わせ場所を間違える、予定の時間に来られない。

こうしたことが繰り返される場合、単なるうっかりではないことがあります。

特に、以前は予定管理がしっかりしていた方に変化が出た場合は注意が必要です。

認知症の種類によって初期症状は違う

認知症といっても、種類によって最初に目立つ症状が違うことがあります。

認知症の種類初期に目立つ症状特徴的なサイン
アルツハイマー型最近の記憶の障害同じ話を繰り返す、約束を忘れる
血管性認知症判断力や段取りの低下できることとできないことにムラがある
レビー小体型幻視、認知機能の変動人や虫が見える、日によって調子が違う
前頭側頭型性格や行動の変化怒りっぽい、同じ行動を繰り返す、社会性が低下する

「もの忘れがないから認知症ではない」とは言い切れません。

幻視、性格変化、行動の変化が先に目立つタイプもあります。

気になる変化が続く場合は、早めに相談してください。

受診の目安と相談先

初期症状に気づいても、

「本人を傷つけたくない」

「本当に認知症かわからない」

「まだ大丈夫かもしれない」

と迷うご家族は多いです。

その気持ちは自然です。

ただ、受診して「異常なし」「加齢によるもの忘れ」と言われれば、それは安心材料になります。

気になる変化があるなら、早めに相談して損はありません。

① 受診を考えたいタイミング

次のような場合は、相談を検討してください。

・チェックリストで3個以上当てはまる
・「いつもと違う」変化が2〜3か月続いている
・料理、お金、薬、外出などに支障が出ている
・火の消し忘れや道に迷うことがある
・性格や言動が急に変わった
・家族だけでは対応が難しくなってきた

② どこに相談すればいい?

状況相談先
まず相談したいかかりつけ医、内科
もの忘れが気になるもの忘れ外来、脳神経内科
幻覚や行動変化がある精神科、脳神経内科
介護サービスを知りたい地域包括支援センター
受診前に相談したい地域包括支援センター、かかりつけ薬局

地域包括支援センターとは、市区町村に設置されている高齢者の相談窓口です。

医療機関を受診する前に、介護や生活の相談をすることもできます。

また、受診時は、お薬手帳を持参してください。

睡眠薬、抗不安薬、抗ヒスタミン薬など、一部の薬が眠気やぼんやり感に関係することがあります。

薬剤師の立場からも、服用中の薬の確認はとても大切だと日々感じます。

まとめ|「いつもと違う」という感覚を大切に

認知症の初期症状について整理すると、

・初期症状は「年のせい」「疲れ」と見過ごされやすい
・同じ話を繰り返す、最近の出来事を忘れる場合は注意したい
・料理の味つけ、リモコン操作、買い物の変化も初期サインになることがある
・認知症の種類によって、もの忘れ以外の症状が先に出ることもある
・チェックリストで3個以上当てはまる場合は相談を検討する
・受診時は、お薬手帳と気になった出来事のメモを持参するとよい

チェックリストの数より大切なのは、「以前と比べて変わったか」です。

家族の「なんかおかしい」という感覚は、早期発見の大切なきっかけになります。

受診して何もなければ、それは安心につながります。

迷ったときは、かかりつけ医、もの忘れ外来、地域包括支援センターに相談してください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

診断・治療については、必ず医療機関にご相談ください。