「認知症の薬には、どんな種類があるの?」

「アリセプトとメマリーは何が違う?」

「副作用が心配で、飲ませるのをためらっている」

認知症の薬について、こうした質問をご家族から受けることがあります。

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、認知症の薬は在宅の現場でも日常的に関わってきました。

まず知っておきたいのは、認知症の薬は「認知症を治す薬」ではなく、進行を遅らせることを目的に使う薬だということです。

この記事では、認知症の薬の種類、、副作用、飲み続ける必要性を薬剤師の立場からお伝えします。

認知症の薬は「治す薬」ではなく進行を遅らせる薬

現在使われている認知症の薬は、認知症を根本から治す薬ではありません。

ここを誤解してしまうと、

「飲んでいるのに治らない」

「効果がないなら、やめてもいいのでは?」

と感じてしまうことがあります。

認知症の薬の目的は、症状の進行をできるだけゆるやかにし、本人が今できている生活を少しでも長く続けられるように支えることです。

たとえば、薬を飲み続けると

・会話ができる時間を保つ
・着替えや食事などの日常動作を保つ
・家族との関わりを少しでも長く続ける
・介護負担が急に増えるのを防ぐ

こうしたことが期待できます。

「劇的によくなる薬」ではなく、「悪くなるスピードをゆるやかにする薬」と考えると、薬との向き合い方がわかりやすくなります。

認知症の薬は大きく2タイプに分かれる

認知症の薬は、大きく分けると2つのタイプがあります。

タイプ代表的な薬主な対象
コリンエステラーゼ阻害薬アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチなど軽度〜中等度、一部は重度にも使用
NMDA受容体拮抗薬メマリー中等度〜重度

少し難しい名前ですが、家族が覚えるなら次の理解で十分です。

コリンエステラーゼ阻害薬は、脳の中の「記憶や考える力を助ける物質」を減りにくくする薬です。

NMDA受容体拮抗薬は、脳が過剰に興奮しすぎないようにブレーキをかける薬です。

どちらがよい・悪いではなく、認知症の種類や進行度、本人の状態に合わせて選ばれます。

コリンエステラーゼ阻害薬|アリセプト・レミニール・リバスタッチ

コリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー型認知症でよく使われるタイプの薬です。

代表的な薬には、アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチがあります。

① アリセプト(一般名:ドネペジル)

アリセプトは、認知症の薬の中でもよく使われる薬です。

項目内容
主な対象アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症
剤形錠剤、OD錠、細粒、ゼリーなど
回数1日1回
特徴軽度から重度まで使われることがある

アリセプトは1日1回でよく、剤形も比較的多いため、服薬管理しやすい薬です。

錠剤が苦手な方には、口の中で溶けるOD錠やゼリー剤が使われることもあります。

主な副作用は、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢などの消化器症状です。

特に飲み始めや増量時に出ることがあります。

また、脈が遅くなる徐脈(じょみゃく)や、まれに興奮が強くなることもあります。

在宅医療の現場で最も多く見てきた薬です。飲み始めは消化器症状が出やすいですが、軽度であれば体が慣れて症状が軽減することがあります。吐き気が強い場合は医師・薬剤師に相談してみてください。

② レミニール(一般名:ガランタミン)

レミニールは、軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症で使われる薬です。

項目内容
主な対象軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症
剤形錠剤、OD錠、内服液
回数1日2回
特徴段階的に増量して使う

レミニールは、アセチルコリンの働きを支える薬です。

内服液があるため、錠剤が苦手な方にも選択肢になります。

主な副作用は、吐き気、嘔吐、食欲不振、下痢、腹痛などです。

アリセプトと同じく、飲み始めや増量時は体調の変化をよく見てください。

③ リバスタッチパッチ・イクセロンパッチ(一般名:リバスチグミン)

リバスタッチパッチ、イクセロンパッチは、貼り薬タイプの認知症薬です。

項目内容
主な対象軽度〜中等度のアルツハイマー型認知症
剤形貼り薬
回数1日1回貼り替え
特徴飲み薬が難しい方に使いやすい

貼り薬なので、薬を飲み込むのが難しい方や、錠剤を嫌がる方に使いやすいのが特徴です。

皮膚から少しずつ吸収されるため、飲み薬に比べて胃腸の副作用が少ない場合があります。

一方で、貼った場所が赤くなる、かゆくなる、かぶれるといった皮膚症状には注意が必要です。

毎日同じ場所に貼らず、背中、胸、上腕などで貼る場所を変えると、皮膚トラブルを減らしやすくなります。

80代の男性で、認知症になって以降、「薬を飲むのが苦手」だった方がいました。錠剤を見せるだけで顔をしかめて口を閉じてしまい、ご家族も毎回の服薬で疲弊していました。アリセプトから貼り薬のイクセロンパッチに変更したところ、「これなら貼るだけだから」とご本人も嫌がらず受け入れてくれるようになり、ご家族も「毎日のバトルがなくなって助かりました」と話してくれました。

NMDA受容体拮抗薬|メマリーの特徴

メマリーは、一般名をメマンチンといいます。

中等度〜重度のアルツハイマー型認知症で使われる薬です。

項目内容
主な対象中等度〜重度のアルツハイマー型認知症
剤形錠剤、OD錠、ドライシロップ
回数1日1回
特徴他の認知症薬と併用されることがある

メマリーは、コリンエステラーゼ阻害薬とは作用の仕組みが違います。

脳の神経細胞に負担をかける過剰な刺激を抑え、症状の進行をゆるやかにする目的で使われます。

アリセプトなどと組み合わせて使われることもあります。

主な副作用は、めまい、ふらつき、眠気、便秘、頭痛などです。

特に高齢の方では、ふらつきから転倒につながることがあるため注意が必要です。

メマリーを追加してから数日後、夜中にトイレへ向かう途中でふらついて転倒してしまった方がいました。幸い大きなけがはありませんでしたが、ご家族から「急にふらつくようになった」とご相談があり、薬の影響かもしれないと医師に伝えたところ、用量を調整してもらえました。新しい薬を始めたタイミングと体調の変化が重なっているときは、迷わず相談してほしいと感じた出来事でした。

4つの認知症薬を一覧で比較

それぞれの薬を簡単に整理すると、次のようになります。

薬の名前一般名主な対象剤形回数
アリセプトドネペジル軽度〜重度、レビー小体型にも使われることがある錠剤、OD錠、細粒、ゼリー1日1回
レミニールガランタミン軽度〜中等度錠剤、OD錠、内服液1日2回
リバスタッチパッチ・イクセロンパッチリバスチグミン軽度〜中等度貼り薬1日1回貼り替え
メマリーメマンチン中等度〜重度錠剤、OD錠、ドライシロップ1日1回

選び方は、「どの薬が一番強いか」ではありません。

認知症の種類、進行度、飲み込みやすさ、副作用の出やすさ、家族の管理しやすさを含めて考えます。

薬が合わないと感じたときは、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。

薬が効いているかどうかの見方

認知症の薬は、飲んですぐに目に見えてよくなる薬ではありません。

そのため、ご家族からは、

「飲んでも変わらない気がします」

「本当に効いているんでしょうか」

と相談されることがあります。

効果を見るときは、「よくなったか」だけでなく、「悪化のスピードがゆるやかか」を見ることが大切です。

たとえば、

・会話量が保たれている
・食事や着替えが続けられている
・以前と同じ生活リズムが続いている
・急激な悪化がない
・家族との関わりが保たれている

こうした状態も、薬の意味を考えるうえで大切な目安になります。

一方で、次のような場合は相談してください。

・副作用が強くて続けられない
・急にふらつきや眠気が強くなった
・食欲低下や吐き気が続く
・急に興奮や怒りっぽさが強くなった
・明らかに症状が急速に悪化している

薬をやめる、増やす、減らす、変更する判断は、必ず医師と相談して決めましょう。

飲みにくい・管理しにくいときの工夫

認知症の薬は、飲み続けることが大切です。

ただ、実際の介護では「薬を飲んでくれない」「飲んだかどうかわからない」という悩みがよくあります。

そういう場合は、薬を変える前に、飲み方や管理方法を見直すだけで改善することがあります。

「薬を嫌がるから無理」と決めつけず、本人に合う形を探すことが大切です。

飲みにくさや管理の難しさは、薬剤師に相談しやすい内容です。

まとめ|認知症の薬は特徴を知って続けることが大切

認知症の薬について整理すると、

・認知症の薬は治す薬ではなく、進行を遅らせるための薬
・薬は大きく、コリンエステラーゼ阻害薬とNMDA受容体拮抗薬に分かれる
・アリセプト、レミニール、リバスタッチは軽度〜中等度で使われることが多い
・メマリーは中等度〜重度で使われ、他の薬と併用されることもある
・副作用は飲み始めや増量時に出やすいため、家族の観察が大切
・飲みにくい場合は、OD錠、ゼリー、貼り薬、一包化などの選択肢がある

「薬を飲んでも治らない」と感じることがあるかもしれません。

でも、認知症の薬は、本人の生活を少しでも長く保つために使われる薬です。

副作用が心配なとき、飲みにくいとき、効果がわからないときは、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

薬の使用・変更・中止については、必ず処方した医師または薬剤師にご確認ください。