「認知症って、何歳くらいからなるの?」

「まだ50代だけど、もの忘れが気になる」

「親が70代になったけど、そろそろ認知症になるかもしれない」

認知症の発症年齢については、意外と正確に知られていないことがあります。

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、「うちの親はまだ若いから大丈夫」「80代だから仕方ない」といった声を聞くことがありました。

認知症は65歳以上で増えやすくなりますが、65歳未満でも発症することがあります。

この記事では、認知症が増えやすい年齢、若年性認知症、年齢別に気をつけたいサイン、早期発見のポイントをお伝えします。

認知症は何歳から増える?65歳以上でリスクが上がる

認知症は、ある日突然「この年齢から始まる」と決まっている病気ではありません。

ただし、年齢が上がるほど発症しやすくなります。

特に65歳以上になると、認知症の有病率は少しずつ上がり、75歳以降でさらに目立って増えていきます。

認知症の有病率の目安は、次のように考えられています。

年齢認知症の有病率の目安
65〜69歳約3〜4%
70〜74歳約7〜8%
75〜79歳約13〜14%
80〜84歳約22〜23%
85〜89歳約35〜40%
90歳以上約50〜60%

年齢が5歳上がるごとに、認知症の方の割合が大きく増えていくのが特徴です。

85歳以上では、3人に1人以上が認知症という計算になります。

ただし、ここで大切なのは「高齢だから必ず認知症になる」という意味ではないことです。

年齢は大きなリスクのひとつですが、生活習慣病、運動習慣、社会とのつながり、睡眠、持病、服用中の薬なども関係します。

「年齢だけで決まるものではない」と考えておくと、予防や早期発見に目を向けやすくなります。

65歳未満でも起こる若年性認知症

65歳未満で発症する認知症を、若年性認知症といいます。

「認知症は高齢者の病気」というイメージがありますが、働き盛りの40〜60代で発症することもあります。

若年性認知症は、本人も周囲も認知症だと思いにくく、発見が遅れやすいのが特徴です。

① 若年性認知症が見落とされやすい理由

若年性認知症は、次のような理由で気づかれにくいことがあります。

・まだ若いから認知症ではないと思われる
・うつ病やストレスと間違われる
・仕事の疲れとして片づけられる
・本人が職場や家族に隠そうとする
・記憶より、仕事や性格の変化として現れることがある

50代の男性で、長年営業職として活躍されていた方がいました。最初は「最近、商談の予定をうっかり忘れることが増えた」程度の話だったそうですが、ご家族は「ただの仕事疲れだろう」と思っていたといいます。実際に診断がつくまでに3年近くかかり、その間ご本人も「自分がおかしいのではないか」と一人で悩んでいたと、後になって話してくれました。「もっと早く相談していれば」というご家族の言葉が、今も心に残っています。

② 若年性認知症で気づきたいサイン

若い世代では、もの忘れだけでなく、仕事や行動の変化として現れることがあります。

・仕事のミスが急に増えた
・段取りが組めなくなった
・予定や約束を忘れることが増えた
・言葉が出にくくなった
・怒りっぽくなった、無気力になった
・同じ物を何度も買ってしまう

「最近仕事でミスが多い」「以前はできていたことができなくなった」という変化が続く場合は、早めに相談してください。

若年性認知症は、医療だけでなく、仕事、収入、家族の生活設計にも関わります。

早めに診断や支援につながることで、本人と家族が準備できる時間を作れます。

年齢別に気をつけたい認知症のサイン

認知症のリスクや気づきやすい変化は、年代によって少し違います。

ここでは、家族が見ておきたいポイントを年齢別に整理します。

① 40〜50代|若年性認知症とうつ症状に注意

40〜50代では、認知症の頻度は高くありません。

ただし、発症することはあります。

この年代では、もの忘れよりも、仕事や性格の変化として現れることがあります。

・仕事の段取りが急に悪くなった
・同じミスを繰り返す
・言葉が出にくくなった
・怒りっぽくなった
・無気力になった

うつ病や更年期、睡眠不足、ストレスと似て見えることもあります。

自己判断せず、変化が続く場合は医療機関に相談してください。

② 60〜70代前半|早期発見を意識したい時期

60代以降は、認知症のリスクが少しずつ上がっていきます。

この時期に早く気づけると、治療、生活習慣の見直し、家族の準備がしやすくなります。

注意したいサインは次のようなものです。

・同じ話を何度もする
・最近の出来事を忘れる
・日付や曜日があいまいになる
・料理や金銭管理に変化が出る
・薬の飲み忘れが増える

「年のせい」で済ませず、気になる変化があれば、かかりつけ医に「もの忘れが気になります」と相談してみてください。

③ 70〜80代|家族が変化に気づきやすい時期

70〜80代は、認知症の有病率がさらに上がる年代です。

本人よりも、家族や周囲が変化に気づくことが多くなります。

・短時間で同じことを繰り返す
・昨日や今日の出来事を覚えていない
・以前できていた家事が難しくなる
・お金の管理が不安定になる
・薬の管理ができなくなる
・夜間の行動が増える

この年代では、服用中の薬の影響も確認したいところです。

睡眠薬、抗不安薬、一部の鼻炎薬や膀胱の薬などが、眠気、ふらつき、ぼんやり感に関係することがあります。

気になる変化がある場合は、薬剤師にも相談してください。

④ 80〜90代以上|複数の原因が重なりやすい時期

80代以降では、認知症だけでなく、持病、薬の影響、脱水、感染症、栄養不足、足腰の衰えなどが重なりやすくなります。

急にぼんやりする、食事量が減る、歩き方が変わる、転倒が増えるといった変化は、認知症の進行だけとは限りません。

「高齢だから仕方ない」と決めつけず、急な変化があるときは受診や相談をしてください。

早期発見のポイント|「いつもと違う」を見逃さない

認知症の早期発見で大切なのは、特別な検査よりも、普段の生活の変化に気づくことです。

家族だからこそ気づける変化があります。

① 以前できていたことが難しくなる

たとえば、次のような変化です。

・料理の手順がわからなくなる
・買い物で同じ物ばかり買う
・通い慣れた道で迷う
・薬の管理ができなくなる
・約束や予定を忘れる
・会話の中で同じ質問が増える

大切なのは、「たまに忘れる」ではなく、「生活に支障が出ているか」です。

もの忘れがあっても、メモを見れば思い出せる、生活に大きな支障がない場合は、年齢相応の変化のこともあります。

一方で、生活の中で困りごとが増えている場合は、早めの相談が安心です。

② 生活習慣病や薬も確認する

高血圧、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙、運動不足などは、認知症リスクと関係があります。

血圧、血糖、コレステロールの管理は、心臓や血管だけでなく、脳の健康を守ることにもつながります。

また、薬の影響でも、もの忘れやぼんやり感が強く見えることがあります。

・薬が増えたあとから眠気が強い
・睡眠薬を飲み始めてからふらつく
・市販の鼻炎薬でぼんやりする
・便秘や尿の薬を始めてから様子が変わった

こうした場合は、薬剤師に相談してください。

早期発見が大切な理由

認知症は、早く気づくほどできることが増えます。

「診断されるのが怖い」と受診を先延ばしにしたくなる気持ちは自然です。

ただ、早く相談することで、本人と家族にとって大切な時間を作れます。

早期発見には、次のようなメリットがあります。

・薬による進行抑制を早く始められる
・生活習慣や薬の見直しができる
・本人が将来のことを自分で決めやすい
・介護サービスや住環境を準備できる
・認知症に似た別の病気を見つけられることがある

認知症に似た症状は、甲状腺機能低下症、ビタミン不足、うつ病、脱水、薬の影響などでも起こることがあります。

中には、治療や調整で改善が期待できるものもあります。

だからこそ、「認知症だったら怖い」ではなく、「違う原因があるかもしれないから確認する」という気持ちで受診してほしいです。

社会とのつながりも認知症予防の大切な要素

認知症予防では、運動や食事だけでなく、人とのつながりも大切です。

会話、外出、役割、趣味の活動は、脳への刺激になります。

・家族や友人と話す
・趣味のサークルに参加する
・地域の集まりに顔を出す
・ボランティアや仕事で役割を持つ
・デイサービスや通いの場を利用する

80代で一人暮らしをされていた女性は、毎週のように近所の方とお茶会を楽しみ、町内会の役員も続けていらっしゃいました。同じ年代でも一人で家にこもりがちだった方と比べて、もの忘れの進み方が明らかにゆっくりだったのが印象的でした。「誰かと話す日があるから、頭が動いている気がする」とご本人もおっしゃっていました。

もちろん、人と関わっていれば絶対に認知症にならないわけではありません。

それでも、孤立を防ぎ、生活のリズムを保つことは、認知症予防や進行予防の面で大切です。

受診・相談の目安

もの忘れが気になるときは、まずかかりつけ医に相談して大丈夫です。

必要に応じて、もの忘れ外来、脳神経内科、精神科、老年内科などにつないでもらえます。

相談内容相談先
まず相談したいかかりつけ医、内科
詳しく検査したいもの忘れ外来、脳神経内科
気分の落ち込みも強い精神科、心療内科
若年性認知症が心配若年性認知症支援窓口
介護サービスを知りたい地域包括支援センター
介護保険を申請したい市区町村の窓口

次のような変化が続く場合は、早めに相談してください。

・同じことを何度も聞く
・約束や予定を何度も忘れる
・通い慣れた道で迷う
・お金や薬の管理が難しくなる
・性格や行動が急に変わった
・仕事や家事に明らかな支障が出ている

まとめ|何歳でも早期発見・早期相談が大切

認知症の発症年齢と早期発見について整理すると、

・認知症は65歳以上で増えやすく、75歳以降でさらに目立って増える
・65歳未満でも若年性認知症を発症することがある
・若年性認知症は、仕事のミスや性格の変化として見落とされやすい
・70〜80代では、家族が生活の変化に気づくことが大切
・急な変化は、薬、脱水、感染症、別の病気が関係している場合もある
・早期発見によって、治療、生活の準備、本人の意思決定がしやすくなる
・社会とのつながりを保つことも、脳の健康にとって大切

「まだ若いから大丈夫」

「もう高齢だから仕方ない」

どちらも、受診を遅らせる理由にはしないでください。

何歳であっても、「いつもと違う」と感じたら、早めに相談することが大切です。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

診断・治療・検査については、必ず医療機関にご相談ください。