「認知症の薬を飲み始めてから、便秘がひどくなった気がする」

「アリセプトやメマリーと便秘は関係あるの?」

「認知症の親が便秘で困っているけれど、薬のせいなのかな?」

認知症の薬と便秘の関係については、調剤薬局や在宅医療の現場でもよく相談を受けます。

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として見ると、認知症の薬や一緒に使われる薬の中には、便秘に関係するものがあります。

ただし、認知症の方の便秘は、薬だけでなく、水分不足、食事量の低下、運動量の低下、トイレ環境などが重なって起こることが多いです。

この記事では、認知症の薬と便秘の関係、便秘を起こしやすい薬、家族が気づきたいサイン、具体的な対処法をお伝えします。

認知症の方に便秘が多い理由|薬だけが原因とは限りません

認知症の方に便秘が多い理由は、ひとつではありません。

薬の副作用だけでなく、生活全体の変化が重なっていることが多いです。

原因内容
薬の影響認知症薬や一緒に使う薬が腸の動きに影響する
水分不足のどの渇きに気づきにくく、水分量が減る
食事量の低下食べる量が減り、便の材料が少なくなる
運動量の低下活動量が減り、腸の動きも弱くなる
トイレの問題便意を伝えにくい、移動が難しい
自律神経の変化認知症や加齢で腸のリズムが乱れやすい

在宅医療の現場でも、「薬だけが原因」というより、複数の要因が重なって便秘になっている方が多くいました。

そのため、便秘になったときは、

・最近追加された薬はないか
・水分は足りているか
・食事量は減っていないか
・排便の間隔はどのくらいか
・お腹の張りや痛みはないか

を一緒に確認することが大切です。

便秘を起こしやすい認知症関連の薬

認知症の方では、認知症薬そのものだけでなく、周辺症状や持病に使う薬も便秘に関係します。

① メマリー(メマンチン)

認知症薬の中で、便秘に注意したい薬のひとつがメマリーです。

メマリーは、中等度〜重度のアルツハイマー型認知症に使われる薬です。

主な副作用として、めまい、眠気、便秘、頭痛などがみられることがあります。

特に注意したいのは、飲み始めや増量したタイミングです。

「薬を始めたあとから便秘がひどくなった」と感じる場合は、自己判断で中止せず、医師や薬剤師に相談してください。

② アリセプトなどのコリンエステラーゼ阻害薬

アリセプト、レミニール、リバスタッチパッチなどは、コリンエステラーゼ阻害薬と呼ばれるタイプの薬です。

このタイプは、吐き気、下痢、食欲不振などの消化器症状がよく知られています。

一方で、体質や併用薬によっては便秘が気になることもあります。

また、アリセプトなどで吐き気が出たときに、吐き気止めが追加されることがあります。

吐き気止めの種類によっては腸の動きを弱め、便秘につながる場合があります。

「認知症薬を始めたあと」「吐き気止めが追加されたあと」に便秘が強くなった場合は、薬の影響も考えて相談してください。

③ 抗精神病薬・睡眠薬・抗不安薬

認知症の方では、興奮、幻覚、不眠、不安などに対して、抗精神病薬、睡眠薬、抗不安薬が使われることがあります。

これらの薬は、眠気やふらつきだけでなく、便秘にも関係することがあります。

④ 認知症以外の持病の薬

認知症の方は、高血圧、糖尿病、心臓病、痛み、貧血などの薬も一緒に飲んでいることが多いです。

薬が多い方ほど、どの薬が便秘に関係しているか判断しにくくなります。

気になる場合はお薬手帳を持って、薬剤師に「便秘に関係しそうな薬はありますか?」と聞いてみてください。

認知症の方の便秘が危険な理由

便秘は「出ないだけ」と思われがちですが、認知症の方では大きな問題につながることがあります。

① 不穏や興奮の原因になることがある

認知症の方は、「お腹が痛い」「張って苦しい」と言葉でうまく伝えられないことがあります。

その結果、落ち着かない、怒りっぽい、夜眠れない、大声を出すといった形で表れることがあります。

夜中に突然大声を出すようになった90代の男性がいました。ご家族は「認知症が進んだのでは」と心配されていましたが、お腹を確認すると硬く張っていて、数日間排便がなかったことが判明しました。便秘薬で排便を促したところ、その夜から落ち着いて眠れるようになり、ご家族も「まさかお腹のことだったとは」と驚いていました。

「急に認知症が悪化した」と見える変化でも、便秘や痛みが隠れていることがあります。

② 腸閉塞や転倒につながることがある

ただの便秘だと思っても、実は腸閉塞(ちょうへいそく)という状態の初期症状の可能性があります。

腸閉塞の初期症状には便秘、強い腹痛、お腹の張り、吐き気、嘔吐、ガスが出ないといったものがあります。

認知症の方は痛みを感じにくくなる場合もあるため、お腹の張りがひどく、ガスが全く出ないことに気づいたらすぐに医師へ相談してください。

また、高齢者では排便時に強くいきむことで、血圧が変動したり、立ちくらみを起こしたりすることがあります。

トイレでの転倒は骨折につながることもあるため、総じて便秘は早めに対処したい症状です。

家族が気づきたい便秘のサイン

認知症の方は、便秘のつらさを言葉で伝えにくいことがあります。

そのため、家族や介護者が行動や体調の変化から気づくことが大切です。

サインとしては以下の3点が気づきやすいのではないかと思います。

・食欲が落ちた

・お腹が張っている

・トイレに行く回数が増えた

中でも「トイレに行く回数が増えた」というのは便意はあるのに便が出ていない場合があります。

1日に何回もトイレに行く場合は、便が出ているかどうか、声をかけてみてください。

また、介護の中では、食事量や睡眠だけでなく、排便の記録も大切です。

「最後に出たのはいつか」

「便は硬かったか」

「お腹は張っていないか」

をメモしておくと、受診や薬剤師への相談時に役立ちます。

認知症の方の便秘対処法

便秘対策では、いきなり便秘薬を増やすのではなく、生活と薬の両方から考えます。

① 水分・食事・活動量を見直す

まず確認したいのは、水分量です。

認知症の方は、のどの渇きを感じにくかったり、トイレを気にして水分を控えたりすることがあります。

水やお茶だけでなく、みそ汁、スープ、ゼリー飲料なども活用してください。

食事では、野菜、海藻、きのこ、豆類、ヨーグルト、発酵食品などを少しずつ取り入れてみましょう。

食事量が少ない方では、無理に大量の食物繊維を増やすより、本人が食べやすい形(おかゆ、柔らかく煮るなど)にすることが大切です。

また、散歩、デイサービス、立ち上がり運動など、少しでも体を動かす機会を作ると腸の動きにつながります。

下の記事も参考にしてみてください。

② 便秘薬を使う場合は体に合うものを選ぶ

生活習慣だけで改善しない場合は、便秘薬を使うことがあります。

認知症の方では、穏やかに便をやわらかくする薬や、腸内環境を整える薬が使われることがあります。

ただし、腎機能、食事量、水分量、ほかの薬との兼ね合いで選び方は変わります。

市販薬を使う場合も、お薬手帳を見せて薬剤師に相談してください。

③ 便秘を起こしている薬がないか見直す

便秘薬を追加する前に、便秘を悪化させている薬がないか確認することも大切です。

確認したいポイントは次の通りです。

・便秘が始まった時期
・新しく追加された薬
・薬を増量したタイミング
・便秘以外の変化
・市販薬やサプリの使用

「この薬をやめて」と家族が判断するのではなく、「薬が変わってから便秘がひどくなった気がします」と医師や薬剤師に伝えてください。

薬を減らす、変更する、便秘薬を調整するなど、状況に合わせて考えることができます。

受診・相談したほうがよい便秘のサイン

次のような場合は、早めに医師や薬剤師に相談してください。

・1週間以上排便がない
・強い腹痛がある
・お腹がパンパンに張っている
・吐き気や嘔吐がある
・ガスが出ない
・便に血が混じる
・便秘と下痢を繰り返す
・薬を始めてから便秘が強くなった
・便秘と同時に急に不穏や興奮が強くなった

特に、強い腹痛、嘔吐、ガスが出ない、お腹の強い張りがある場合は、腸閉塞などの可能性もあるため、早めの受診が必要です。

「便秘くらいで相談していいのかな」と思わず、早めに確認してください。

まとめ|認知症の方の便秘は薬と生活の両方から見る

認知症の方は、便秘のつらさを言葉で伝えにくいことがあります。

だからこそ、家族や介護者が「最後に出たのはいつか」「お腹が張っていないか」「急に落ち着かなくなっていないか」を見てあげることが大切です。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

薬の変更・追加・中止については、必ず処方した医師または薬剤師にご相談ください。