「認知症は予防できるの?」「何をすればいいの?」「サプリを飲めばいい?」

認知症予防について調べると、さまざまな情報が出てきて何から始めればいいか迷ってしまいますよね。

ただ、残念ながら「これさえすれば認知症にならない」という方法はありません。

ただし、科学的な研究で「リスクを下げる可能性がある」と示されている生活習慣はいくつかあります。

大切なのは「特別なことを始める」より「日常の習慣を整える」ことです。

この記事では、認知症予防に効果的な生活習慣7つを、調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師としての視点からわかりやすく解説します。


認知症予防で大切なこと|リスク因子を知る

認知症を予防するためにも、まずは「何が認知症リスクを高めるか」をおさらいしましょう。

研究で認知症リスクを高めることが示されている主な因子は以下の通りです。

  • 高血圧
  • 糖尿病
  • 脂質異常症
  • 肥満
  • 喫煙
  • 過度の飲酒
  • 運動不足
  • 社会的孤立
  • 難聴を放置すること
  • 睡眠不足・睡眠障害

たくさんありますが、すべてを一気に解決しようとするのではなく、

「生活習慣病の管理は、認知症予防でもある」という意識をもつことから始めましょう。


【習慣①】有酸素運動|認知症予防で最も効果的

なぜ効果があるのか

認知症予防について調べた研究の中で、いちばんデータが多く「効果がある」とされているのが有酸素運動です。難しい理由はいくつかありますが、簡単に言うとこんなことが体の中で起きています。

  • 記憶を担当する脳の部分(海馬)が、運動することで小さくなりにくくなる
  • 脳の中で「神経細胞を元気にする栄養」のようなもの(BDNFという物質)が増える
  • 脳に流れる血液の量が増えて、脳がしっかり働きやすくなる
  • 糖尿病・高血圧・肥満といった、認知症のリスクを高める生活習慣病もまとめて改善できる

つまり、脳そのものを若々しく保つ働きと、脳に負担をかける生活習慣病を防ぐ働きの、両方が同時に得られるのが有酸素運動の強みです。

実践のポイント

目安:「週3回以上」・「1回30分以上

おすすめの運動はこちら。

  • ウォーキング(最も始めやすい)
  • 水泳・水中ウォーキング(膝への負担が少ない)
  • 自転車・エアロバイク
  • ダンス(有酸素運動+認知的な刺激のダブル効果)

ここで安心していただきたいのが、「ハードな運動でなくてOK」ということ。早歩きくらいの軽い負荷で十分効果が出ることが分かっています。「ジムに通って汗だくになる」イメージを持たれがちですが、実際は近所をてくてく歩く程度で大丈夫です。

現場で感じること

在宅医療の現場でも、よく外出する方や、デイサービスで体を動かす機会が多い方は、認知機能の低下がゆっくりな印象があります。難しい運動を頑張る必要はなく、「日常的にこまめに動く」ことの積み重ねが、脳の健康を支えているのだと思います。


【習慣②】質のよい睡眠|脳の「お掃除タイム」を確保する

なぜ睡眠が認知症予防になるのか

私たちが眠っている間、脳の中では「グリンファティックシステム」という、いわば脳専用の排水システムが働いています。この仕組みによって、日中に脳の中にたまった老廃物が洗い流されているのです。

そして、その老廃物の代表が「アミロイドβ」。アルツハイマー型認知症の原因の一つとされる物質で、これも睡眠中にしっかり排出されることが分かっています。つまり、よく眠ることは、脳の中の「ゴミ出し」をきちんと行うことそのものなんです。

睡眠不足が続くとどうなる?

  • アミロイドβが脳に溜まりやすくなる
  • 記憶を司る海馬が萎縮しやすくなる
  • 集中力・記憶力・判断力が落ちやすくなる

「最近寝不足で頭がぼんやりする」という感覚は、まさに脳のお掃除が間に合っていない状態だと考えると分かりやすいかもしれません。

実践のポイント

目安:「7〜8時間、できるだけ毎日同じリズムで」

  • 毎日同じ時間に寝て、同じ時間に起きる(体内時計を整える)
  • 寝る1〜2時間前はスマホ・強い光を避ける
  • 寝室は暗く・静かに・少し涼しめ(18〜22℃程度)に保つ
  • 昼寝をするなら30分以内にとどめる(夜眠れなくなるのを防ぐため)

特に注意したいのが「いびき・睡眠時無呼吸症候群」です。これも認知症リスクを高めることが分かっています。大きないびきや、日中に強い眠気を感じる場合は、一度睡眠外来などで検査を受けてみることをおすすめします。


【習慣③】社会参加・人とのつながりを保つ

なぜ人とのつながりが認知症予防になるのか

「孤独」や人とのつながりが少ない状態は、認知症のリスクを高める要因の中でも特に大きいことが分かっています。

人と関わることで脳に起きるいいこと

  • 会話そのものが脳への刺激になる
  • 「自分の役割がある」という感覚が、頭をしっかり働かせ続けてくれる
  • 気分の落ち込み(うつ)を防ぐ。実はうつ病自体も認知症のリスクを高めるため
  • 生活にリズムやメリハリが生まれる

実践のポイント

  • 趣味のサークルや地域の集まりに参加する
  • ボランティア活動をしてみる
  • 友人や家族と、定期的に会ったり話したりする時間をつくる
  • 仕事や地域での役割を、できる範囲で続けていく

在宅医療の現場でも、デイサービスに通い始めてから認知機能の低下がゆっくりになった、という方を何人も見てきました。「自分のことを知ってくれている人がいる場所」があるというのは、それだけで脳にとって大切な刺激になるんだと思います。


【習慣④】脳を使う活動・知的刺激

なぜ知的刺激が認知症予防になるのか

脳は使えば使うほど、神経どうしのつながり(ネットワーク)が強くなっていきます。このネットワークの強さのことを「認知的予備能」と呼びます。この予備能が高いと、脳に多少の変化(病変)が出てきても、症状としてなかなか表に出てこないことが分かっています。いわば、脳に「余力」を持たせておくイメージです。

実践のポイント

特に効果的なのは「新しいことを学ぶ・挑戦する」ことです。

  • 読書(ストーリーや内容についてあれこれ考えながら読むのがおすすめ)
  • 楽器を弾く、または新しく始める
  • 新しい言語を学ぶ
  • 囲碁・将棋・麻雀などのゲーム
  • 料理(「何から作るか」を考える段取り力=実行機能のトレーニングになる)
  • 絵を描く、工作をする

ポイントは「ちょっと苦手なこと・新しいこと」に挑戦すること。 やり慣れた作業をこなすだけでは脳はあまり活性化されません。少し難しいくらいのことに取り組むほうが、脳への刺激として効果的です。


【習慣⑤】生活習慣病の管理

特に大切な3つの管理

血圧の管理
40〜60代の中年期に血圧が高い状態が続くと、その後の認知症リスクが特に上がりやすいことが分かっています。上の血圧(収縮期血圧)を130mmHg未満にコントロールすることで、認知症リスクが下がるという研究もあります。

血糖の管理
糖尿病はアルツハイマー型・血管性、どちらの認知症のリスクも高めます。血糖値やHbA1cの値を、定期的にチェックしておきましょう。

コレステロール・体重の管理
コレステロールや中性脂肪のコントロール、体重管理も認知症予防につながります。

「血圧・血糖・コレステロールを整えることは、そのまま認知症予防でもある」 と意識するだけでも、日々の通院や薬の飲み方への向き合い方が変わってくるかもしれません。


【習慣⑥】禁煙・節酒

タバコは認知症リスクを高める

喫煙は、認知症のリスクを約1.4〜1.6倍高めるとされています。タバコが脳に与えるダメージはこんなところです。

  • 脳への血流を減らしてしまう
  • 酸化ストレスで神経細胞を傷つける
  • 高血圧や動脈硬化を悪化させる

何歳で禁煙しても、認知症リスクを下げる効果があります。「今さら遅い」ということはありません。

お酒は「飲みすぎ」に注意

お酒については、以前は「少量なら認知症リスクを下げる」という研究もありましたが、近年は「飲む量が増えるほどリスクも上がる」という見方が強くなってきています。特に大量の飲酒を続けると、脳の萎縮や認知機能の低下と強く関連することが分かっています。


【習慣⑦】バランスのよい食事

認知症予防に効果的とされる食事例

地中海食
オリーブオイル・魚・野菜・果物・ナッツ・豆類を中心とした食事です。認知症予防との関連を示す研究が多く報告されています。

MIND食
地中海食とDASH食(高血圧予防の食事法)を組み合わせたもの。緑黄色野菜・ベリー類・魚・ナッツ・オリーブオイルを積極的にとり、赤身肉・バター・ファストフードを控える食事パターンです。

積極的に摂りたい食品

食品理由
青魚(サバ・イワシ・サンマ)DHA・EPAが豊富(脳の神経細胞をつくる成分)
緑黄色野菜・葉物野菜葉酸・ビタミン・抗酸化物質が豊富
ベリー類(ブルーベリーなど)強い抗酸化作用
ナッツ類ビタミンE・体に良い脂質
発酵食品(納豆・味噌・ヨーグルト)腸内環境を整える(腸と脳はつながっている)

控えたい食品

食品理由
加工食品・ファストフード体の中の炎症を促進し、血糖値も急に上げやすい
糖分の多い飲み物・お菓子血糖値の急上昇・糖化ストレスにつながる
過剰な塩分高血圧を悪化させる

サプリメントとの関係

「認知症予防のサプリを飲んでいるから大丈夫」と、生活習慣のほうを後回しにしてしまう方もいますが、サプリはあくまで生活習慣の「補助」です。運動・睡眠・人とのつながりといった生活習慣を整えないまま、サプリだけで認知症を予防することはできません。サプリについては別記事で詳しく解説しています。


まとめ|「今日から少しずつ」が認知症予防の基本

認知症予防の生活習慣について整理すると、次のようになります。

  • まずは有酸素運動・質のよい睡眠・社会参加の3つから始めると取り組みやすい
  • 高血圧や糖尿病など生活習慣病の管理は、そのまま認知症予防にもつながる
  • サプリはあくまで補助。生活習慣の改善が土台になる
  • 「何歳から始めても遅くない」。今日できることをひとつから始めてみてください

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

習慣今日からできること
①有酸素運動まず10分の散歩から始める
②質のよい睡眠毎日同じ時間に寝起きする
③社会参加週1回、誰かと話す機会を作る
④知的刺激新しい趣味・読書を始める
⑤生活習慣病の管理血圧・血糖を定期的に測る
⑥禁煙・節酒まず飲酒量を週に1〜2回減らす
⑦バランスのよい食事週3回、青魚を食べる

認知症予防は「何か特別なことを始める」ことより、「今の生活習慣を少しずつ整える」ことの積み重ねです。「もう遅い」ということはありません。何歳から始めても、脳にとって良い影響があります。今日からできることをひとつ、始めてみてください。


※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。生活習慣の改善については、かかりつけ医にご相談ください。