「健診で血糖値が高めと言われたけど、全然自覚ない」

「少し高いだけだから、まだ大丈夫だよね」

「何をすればいいかわからなくて、結局何もしてない」

こう感じている方は少なくありません。

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、「血糖値が高いのはわかっていたけれど、症状がないから」と様子を見ているうちに、合併症が進んでしまった方を見てきました。

血糖値が高いというだけでは特に症状はありません。

ただ、高血糖の状態が続くと体の中で様々な影響をもたらします。

この記事では、血糖値が高い状態を放置するとどうなるのか、自覚症状が出にくい理由、今日からできる対策を薬剤師の視点からお伝えします。

血糖値が高いと体の中で何が起きる?

食事をすると、血液中にブドウ糖が増えます。

通常は、インスリンというホルモンが働き、糖を細胞に取り込ませることで血糖値は下がります。

ところが、インスリンの分泌が少なかったり、インスリンの効きが悪くなったりすると、血液中に糖が多くなりやすくなります。

この状態が高血糖です。

① 高血糖は血管を少しずつ傷つける

血液中に糖が多い状態が続くと、血管や神経、臓器に少しずつ負担がかかります。

主に関係するのが、糖化と酸化ストレスです。

糖化とは、余った糖が体のたんぱく質と結びつき、血管や細胞を傷つけやすくする反応です。

酸化ストレスとは、体の中で細胞を傷つける力が強くなっている状態です。

どちらも、血管の内側に負担をかけ、動脈硬化や合併症につながる原因になります。

② 自覚症状がないまま進むことが多い

高血糖の怖いところは、初期にはほとんど自覚症状がないことです。

痛みもなく、日常生活も普通に送れるため、

「まだ大丈夫」

「次の健診まで様子を見よう」

と思いやすいです。

しかし、症状がない間にも、血管への負担は少しずつ積み重なっています。

健診で血糖値やHbA1cを確認するのは、症状が出る前に気づくためです。

リスク①心臓・脳・足の血管への影響

高血糖が続くと、太い血管にも影響します。

太い血管が傷つくと、心臓や脳、足の血流に関わる病気のリスクが高まります。

リスク内容
狭心症・心筋梗塞心臓の血管が狭くなったり詰まったりする
脳梗塞・脳卒中脳の血管が詰まり、麻痺や言語障害が残ることがある
末梢動脈疾患足の血流が悪くなり、痛みや傷の治りに影響する

「血糖値の問題」は、糖尿病だけの話ではありません。

血管全体の健康に関わる問題です。

特に、高血圧、脂質異常症、喫煙、肥満が重なっている方は、血管への負担がさらに大きくなります。

リスク②目・腎臓・神経への影響

糖尿病の合併症としてよく知られているのが、目、腎臓、神経への影響です。

これらは「糖尿病の三大合併症」と呼ばれます。

① 目への影響(網膜症)

網膜症は、目の奥にある網膜の細い血管が傷つき、視力にかかわる疾患です。

初期は自覚症状がほとんどありません。

進行すると、視界がかすむ、ぼやける、視力が落ちるなどの症状が出ることがあります。

さらに進むと、失明につながることもあります。

「見えているから大丈夫」と思っていても、目の奥では変化が進んでいる場合があります。

糖尿病と診断された方は、内科だけでなく眼科での定期的な確認も大切です。

② 腎臓への影響(糖尿病性腎症

糖尿病性腎症は、腎臓の細い血管が傷つき、血液をろ過する力が落ちていく合併症です。

初期は自覚症状がほとんどなく、尿検査でたんぱく尿などをきっかけに見つかることがあります。

進行すると、腎臓の働きが大きく低下し、透析が必要になる場合もあります。

在宅医療で訪問していた75歳の男性のことが忘れられません。週3回の透析通院が生活の中心になっていて、「昔、健診で血糖値が高いと言われたけど、仕事が忙しくて放置してしまった」とおっしゃっていました。「あのとき少し気をつけていれば、こうはならなかったかもしれないのに」と寂しそうな笑顔でいう言葉は、今も頭に残っています。ただ、この方の話をするのは責めるためではなく、「気づいた今が一番早いタイミング」だということを知ってほしいからです。

③ 手足や自律神経への影響(神経障害

神経障害では、手足の神経や自律神経に影響が出ることがあります。

代表的な症状は、次のようなものです。

・手足のしびれ
・ジンジンする痛み
・感覚が鈍くなる
・足の傷に気づきにくく治りにくい
・立ちくらみ
・便秘や下痢を繰り返す

特に足の感覚が鈍くなると、靴ずれや小さな傷に気づきにくくなります。

そこに血流の悪さや感染が重なると、傷が悪化することがあります。

糖尿病では、血糖値だけでなく足のケアも大切です。

リスク③認知症との関係

高血糖は脳の健康とも関係し、血糖値が高い状態が長く続くと脳の血管にも負担がかかります。

その結果、血管性認知症のリスクに関係することがあります。

また、高血糖やインスリン抵抗性は、アルツハイマー型認知症との関連も研究されています。

もちろん、血糖値が高いから必ず認知症になるわけではありません。

ただ、血糖管理は、心臓、脳、腎臓、神経など全身を守るための大切な要素です。

「血糖値は糖尿病だけの問題」と考えず、将来の健康を守る視点で見ていきましょう。

高血糖に気づくためのサイン

高血糖の初期は、ほとんど症状がありません。

ただし、血糖値が高い状態が続くと、次のようなサインが出ることがあります。

サイン背景にあること
のどが渇く尿と一緒に水分が失われやすい
尿の回数が増える糖を尿から出そうとして尿量が増える
疲れやすい糖をうまくエネルギーに使えていないことがある
傷の治りが遅い血流や免疫に影響していることがある
視界がぼやける高血糖の影響で見え方が変わることがある
体重が急に減る糖を使えず、脂肪や筋肉を分解している可能性

なんとなく、このようなことを感じることが増えたら医師へ相談してみてください。

今すぐできること

高血糖のリスクを知ると、不安になる方もいると思います。

でも、知識があるからこそ、今から対策できることもあります。

血糖値対策は、特別なことを始める必要はありません。

まずは、できることからひとつずつ始めてみましょう。

① 食べる順番を変える

おすすめは、

  1. 野菜、海藻、きのこ
  2. 肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質
  3. ご飯、パン、麺などの糖質

の順番です。

食物繊維やたんぱく質を先に食べることで、食後の血糖値の上がり方をゆるやかにしやすくなります。

② 食後10分歩く

食後に軽く歩くと、筋肉が血液中の糖を使いやすくなります。

おすすめは、食後15〜30分くらいに10分ほど歩くことです。

歩くのが面倒な場合はその場で足踏みや家の中を歩く、立って家事をするだけでもかまいません。

③ 甘い飲み物をやめる

ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒーなどは、血糖値を急激に上げやすい飲み物です。

まずは、普段の飲み物を水、お茶、無糖コーヒーに変えるところから始めてみてください。

④ 睡眠を整える

睡眠不足は、血糖値を上げるホルモンやインスリンの効きに関係します。

まずは、今より30分早く寝ることを目標にしてみてください。

寝る前のスマートフォン、夜遅い食事、寝酒を見直すことも大切です。

受診・相談の目安

健診で血糖値が高いと言われた場合は、血液検査の結果を確認してみてください。

特に、次のような場合は早めに医療機関へ相談しましょう。

数値・状態対応の目安
HbA1c 5.6〜5.9%生活習慣を見直し、次回健診で確認
HbA1c 6.0〜6.4%かかりつけ医に相談し、定期的に経過を見る
HbA1c 6.5%以上内科・糖尿病内科への受診をおすすめ
空腹時血糖 126mg/dL以上医療機関で確認したい数値
+ のどの渇き・頻尿・体重減少早めに受診したいサイン

症状がなくても、健診で「要受診」と書かれている場合は放置しないでください。

「忙しいから、落ち着いたら」と思っているうちに、数値が上がっていってしまうことがあります。

お薬手帳や健診結果を持って、かかりつけ医や薬剤師に相談するとスムーズです。

まとめ|自覚症状がない今が始めるベストタイミング

血糖値が高い状態が続くとどうなるかについて整理すると、

・高血糖が続くと、糖化や酸化ストレスにより血管や神経に負担がかかる
・初期は自覚症状が少ないため、健診の数値で早めに気づくことが大切
・心臓、脳、足の血管に影響し、心筋梗塞や脳梗塞のリスクに関係する
・目、腎臓、神経の細い血管にも影響し、網膜症、腎症、神経障害につながることがある
・高血糖は認知症リスクとの関連も研究されている
・食べる順番、食後10分歩く、甘い飲み物をやめる、睡眠を整えることが第一歩になる

血糖値が高いと言われても、自覚症状がないと動き出しにくいものです。

でも、症状がない今こそ、生活を見直しやすいタイミングです。

小さな習慣でも、3か月続けると数値に反映されることがあります。

まずは、今日の食事で野菜から食べる。

夕食後に10分歩く。

甘い飲み物を水に変える。

その一歩からで大丈夫です。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

血糖値の管理、糖尿病治療薬の使用・変更・中止については、必ず主治医または薬剤師にご相談ください。