健康診断の結果を見て、

「HbA1cって何?」

「血糖値とは違うの?」

「高いと言われたけど、糖尿病なの?」

と不安になったことはありませんか?

調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師として、「HbA1cが高いと言われたけど、これは何?」という相談を何度も受けてきました。

数値だけを見て必要以上に不安になる方もいれば、逆に深刻さに気づかず放置してしまう方もいます。

HbA1cは、血糖管理の状態を見るうえでとても大切な指標です。

この記事では、HbA1cの意味、血糖値との違い、基準値の見方、数値が気になったときの対処法をお伝えします。

HbA1cとは?

HbA1cは、ヘモグロビン・エーワンシーと読みます。

簡単にいうと、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を反映する数値です。

血糖値は、その瞬間の血液中のブドウ糖の量を示します。

一方で、HbA1cは、ここ最近の血糖値が高めだったかどうかを見るために使われます。

① 血糖値はその瞬間の数値

血糖値は、測ったその瞬間の血液中の糖の量です。

食事をした後は上がりますし、運動した後は下がることがあります。

睡眠不足、ストレス、体調不良でも変わります。

そのため、1回の血糖値だけでは、普段の血糖管理がよいかどうかを判断しにくいことがあります。

② HbA1cは過去1〜2か月の平均を見る

HbA1cは、赤血球の中にあるヘモグロビンというタンパク質に、糖がどれくらい結びついているかを示す数値です。

血糖値が高い状態が続くほど、ヘモグロビンに糖が結びつきやすくなり、HbA1cも高くなります。

赤血球は約1〜2か月かけて入れ替わるため、HbA1cは過去1〜2か月の血糖状態を反映します。

つまり、HbA1cが高いということは、ここ1〜2か月の間、血糖値が高めの時間が多かった可能性があるということです。

HbA1cの基準値と見方

HbA1cは、数値によっておおよその状態を判断します。

ただし、最終的な診断はHbA1cだけで決まるものではありません。

空腹時血糖、随時血糖、75gブドウ糖負荷試験、症状などを合わせて医師が判断します。

① HbA1cの目安

一般的な目安は次の通りです。

HbA1c見方の目安
5.5%未満正常範囲の目安
5.6〜5.9%生活習慣を見直したい段階
6.0〜6.4%糖尿病予備群の可能性を考える段階
6.5%以上糖尿病が疑われ、医療機関で確認したい段階

医療機関や健診の基準によって、表現が少し違う場合があります。

結果欄に「要経過観察」「要受診」などの判定が書かれている場合は、その指示も確認してください。

② 5.6%以上は生活を見直す良い機会

「5.9%だったけど、まだ大丈夫かな」

と思う方もいます。

たしかに、すぐに糖尿病と決まる数値ではありません。

ただし、5.6%以上は、食事、運動、睡眠などを見直し始めたい段階です。

この時期は、薬を使わずに生活習慣の改善で数値を戻せる可能性があります。

不安になるだけでなく、「今なら変えられるタイミング」と考えてください。

③ HbA1cだけでは診断できない

HbA1cが6.5%以上だったとしても、それだけで糖尿病と確定するわけではありません。

空腹時血糖や他の検査、症状も含めて判断します。

逆に、HbA1cがそれほど高くなくても、食後血糖が大きく上がっている方もいます。

気になる数値がある場合は、自己判断で放置せず、医療機関で確認することが大切です。

HbA1cが高いとなぜ注意が必要?

HbA1cが高い状態が続くと、血管や神経に負担がかかりやすくなります。

糖尿病で怖いのは、血糖値そのものよりも、高血糖が続くことで起こる合併症です。

① 糖尿病の三大合併症

糖尿病の代表的な合併症には、次の3つがあります。

網膜症目の血管が傷つき、視力低下や失明につながることがある
腎症腎臓の機能が低下し、透析が必要になることがある
神経障害手足のしびれ、痛み、感覚低下が起こることがある

これらは、すぐに症状が出るとは限りません。

自覚症状が少ないままゆっくり進むことがあるため、健康診断の結果を定期的に確認することが大切です。

② 心臓や脳の血管にも関係する

血糖値が高い状態が続くと、動脈硬化にも関係します。

動脈硬化とは、血管が硬くなり、血液の流れが悪くなる状態です。

心筋梗塞や脳卒中などのリスクにもつながることがあります。

「血糖値の問題は糖尿病だけの話」ではありません。

血管全体の健康を守るためにも、HbA1cを見ておくことは大切です。

HbA1cが高くなる主な原因

HbA1cが高いということは、ここ1〜2か月の血糖値が高めだった可能性があります。

原因はひとつではありません。次の表を参考にしてみてください。

原因血糖値への影響
糖質の多い食事白米、パン、麺、甘い飲み物で血糖値が上がりやすい
運動不足糖が筋肉で消費されないため血糖値が下がりにくい
睡眠不足ホルモンや自律神経の影響で血糖値が下がりにくくなる
ストレス血糖値を上げるホルモンが増えやすい
肥満インスリンの効きが悪くなりやすい

血糖値やHbA1cは食事、運動、睡眠、ストレス、体重、薬などが強く関係します。

気になる点がある方は医師や薬剤師に確認してください。

HbA1cを下げるために今日からできること

HbA1cは、生活習慣を変えてもすぐには下がりません。

過去1〜2か月の血糖状態が反映されるため、変化が見えるまでには2〜3か月ほどかかることがあります。

だからこそ、焦らず続けることが大切です。

60代男性が、いつもの薬の処方箋のほかに健診結果を手に薬局に来たことがありました。HbA1c 6.8%という数値を見て、顔が青ざめていました。「先生に『このままだと薬が必要になるかもしれない』と言われた。血糖値はずっと大丈夫だと思っていたのに」と、声が沈んでいました。薬なしでもHbA1cを改善できるポイントをいくつかお伝えし、試してみてもらったところ、次の検査では6.1%にまで下がっていました。

① 食べる順番を変える

まず始めやすいのは、食べる順番を変えることです。

おすすめは、

  1. 野菜、海藻、きのこなど食物繊維を多く含む食べ物
  2. 肉、魚、卵、豆腐などのたんぱく質
  3. ご飯、パン、麺などの糖質

の順番です。

食物繊維を先にとることで、糖の吸収がゆるやかになりやすくなります。

「食事内容を全部変える」のは大変ですが、食べる順番なら今日から始めやすいです。

② 甘い飲み物をやめる

ジュース、スポーツドリンク、加糖コーヒー、甘いカフェラテなどは、血糖値を上げやすい飲み物です。

食事を気をつけているのに血糖値がなかなか改善されない方の中には、飲み物で糖分を摂ってしまっているケースも少なくないです。

まずは、食事中や日中の飲み物を水、お茶などの無糖の飲み物に変えてみてください。

③ 食後10分歩く

食後に体を動かすと、筋肉が血液中の糖を使いやすくなります。

おすすめは、食後15〜30分くらいに10分ほど動くことです。

時間がない日は、その場足踏み、家の中を歩く、かかと上げでも大丈夫です。

④ 睡眠を整える

睡眠不足が続くと、血糖値を上げるホルモンが増えやすくなり、インスリンの効きも悪くなることがあります。

まずは、今より30分早く寝ることから始めてみてください。

寝る前のスマートフォン、夜遅い食事、寝酒を見直すことも大切です。

数値別|受診・相談の目安

HbA1cの結果を見たときは、次のように考えるとわかりやすいです。

HbA1c対応の目安
5.5%未満現在の生活習慣を維持し、年1回の健診を続ける
5.6〜5.9%食事、運動、睡眠の見直しを始める
6.0〜6.4%かかりつけ医に相談し、定期的に確認する
6.5%以上内科、糖尿病内科への受診をおすすめ

次のような症状がある場合は、早めに相談してください。

・のどが渇く
・尿の回数が増えた
・体重が急に減った
・強いだるさが続く
・手足のしびれがある
・傷が治りにくい
・健診で「要受診」と書かれている

「病院に行くほどではないけど気になる」という段階でも、薬局の薬剤師に相談してください。

お薬手帳や健診結果を持って相談すると、スムーズです。

まとめ|HbA1cは血糖管理の通知表

HbA1cについて整理すると、

・HbA1cは、過去1〜2か月の平均的な血糖状態を示す指標
・血糖値はその瞬間、HbA1cはここ最近の血糖管理を見る数値
・5.6%以上は生活習慣を見直したいタイミング
・6.5%以上では糖尿病が疑われるため、医療機関で確認したほうがよい
・HbA1cが高い状態が続くと、目、腎臓、神経、血管への影響が心配される
・改善には2〜3か月かかるため、焦らず続けることが大切
・まずは食べる順番、甘い飲み物、食後10分歩く、睡眠の見直しから始める

HbA1cは、血糖管理の通知表のようなものです。

数字を見て落ち込むこともあるかもしれませんが、今の生活を見直すきっかけになるはずです。

気になる数値があったら、放置せず、早めに相談してください。

症状が強い場合や長く続く場合は、一度薬剤師や医療機関にご相談ください。

※本記事は調剤薬局・在宅医療を経験した薬剤師による一般的な情報提供を目的としています。
症状が強い場合や不安がある場合は、医療機関にご相談ください。

血糖値の管理、糖尿病治療薬の使用・変更・中止については、必ず主治医または薬剤師にご相談ください。